おさかな - 女川さかな手帖 - Page 2
宮城県牡鹿郡女川町の魚屋、岡清と鮮冷が綴る、女川の豊かな食と暮らしを彩る”さかな手帖”です。

12月の女川と季節の魚

こんにちは

 

冬の風は西から東へ吹きますが、日本海からの湿気を含んでやってくるこの風は奥羽山脈にぶつかり、

蔵王の木々を樹氷に変えてから太平洋側へやってくるため、

ここ女川では東北地方でありながらも雪はそれほど降るものではありません。

 

 

しかしふと社屋から外を見るとぱらぱらと雪がちらつく様子を今年初めて観測することができ、

改めて冬の訪れを感じる最近です。

 

 

まわりでも風を引いて体調を崩す人が多くいますが、皆さんはお加減いかがでしょうか?

 

 

白菜や大根などの冬が旬の野菜が寒さに備えて糖度を増しておいしくなってくるように、

冬に旬を迎えるお魚は身は締まっているが脂がのっておいしくなって港にやってきます。

 

たとえばサバ。

 

 

夏の産卵期を終えてエサをたくさん食べて、脂が乗ってくるのがちょうど11月後半くらいからです。

 

 

サバは適する水温を求めて動き回る回遊魚で水温が下がってくる冬に南下し始めますが、

ここ女川からほど近い金華山沖漁場には寒流と暖流がぶつかる潮目が存在し、

そこにたくさんのエサがいるため回遊しないサバがいます。

 

 

ここで豊富なエサをバクバク食べて太ったサバが「金華さば」と呼ばれるブランドサバです。

 

 

 

この前捌いたときはまるでフライドチキンでも触ってるんじゃないかくらい手にあぶらがつきました。

それほど今の時期のサバはまるっと太っています。

 

↑もったいないのであら汁をつくったらラーメンスープのような油の層ができるくらいです。

 

 

みなさんも機会があればぜひ丸魚でサバを買ってみてくださいね!

近日中に捌き方もご紹介できればと思っています。

 

それではまた次回!

 

 

おさかなの呼吸

こんにちは。

先日、SNSにてカレイが呼吸している様子を投稿しました。

その際になぜ酸素をわざわざ水からとりだすのか、酸素じゃなくてもいいじゃないか、と不思議に感じました。

それから、魚類の体の構造や酸素の役割、生命の起源にいたるまで少し調べてみました。

 

諸説あるものもありますが、今日はお魚の呼吸となんで酸素のなの?ってことについて書きたいと思います。

 

 

【なんで酸素なの?】

私たちは鼻や口から空気を吸い、肺で酸素を取り込んで二酸化炭素を混ぜて空気を吐きます。

酸素を取り込み二酸化炭素を出す。

これが呼吸ですが、植物から人間までほとんど全ての生物が酸素を取り込んで二酸化炭素を出しているというところが同じなのは不思議ではありませんか?

 

酸素とはそれほどまでに生きていくのに重要なのでしょうか?

 

 

 

 

皆さんも中学生のとき一回は酸素をためた容器にマッチをつっこみ激しく燃える実験をしたと思います。

それが実はヒントで、酸素には物を燃やす力があります。

その燃やす力で酸素は私たちが食べたものから得た栄養をエネルギーに変えてくれるお手伝いをしています。

吐息から出る二酸化炭素はものを燃やした証拠です。

それによって私たちは日々考えたり、動いたりすることができるんですね。

そして、この何かを食べる・取り込むなどしてエネルギーを得ていく生物のほうが、そうしなかった種類の生物よりも強かったために今存在しているほとんどの生物が呼吸をするようになっているようです。

 

 

【エラは肺??】

魚もその例外ではなく酸素がないとエネルギーを得ることができません。ただその方法が私たちとちょっと違うようです。

魚は、私たちが口から空気を吸うように水を口から取り込みます。

その水をエラから排出します。

この過程でエラにあるひだのようなもので水に含まれる酸素をとりこみ、二酸化炭素を水に吸収させて排出しています。

ですのでエラは肺のような役割を担っているんですね。

魚を見るときにエラを開けて中のひだが鮮血の色をしているかで鮮度を確認するのも、死んでしまって時間がたつと呼吸をしていないのでどんどんどす黒くなってくる血の色が確認できるからです。

 

 

 

 

 

魚の中にはもはや呼吸をすることを忘れた種類もいます。

その代表がマグロです。

彼らは泳ぎ続けることで常に口から水を取り込みエラから水を出しています。前に進む力を利用して吸う吐くという行動をしなくて済む、とも言えますし、動かなければ吸うことができず死んでしまうとも言えます。

私もノンストップで動き続ければ呼吸をしなくて済むように進化できるしょうか?(笑)

 

 

まとめると、酸素は生き物にとって重要で、魚はその例外でなく、ただその取り込み方が違う。エラが肺のような役割をしている。といったところです。

 

 

ではまた次回!

 

ブリとヒラマサ

こんにちは、ここ何日かの女川では冷え込む日が続いており、気温が氷点下になるときも出てきました。

ところで皆さん、こちらブリとヒラマサという違うお魚なのですが、どう思われますか?

 

・・・・・一緒じゃないですか?笑 どっちも真ん中に黄色いの入ってないですか?汗汗

 

 

いいえ、でも違うんです。今回はしっかりとこの違いがわかるようになっていっていただきたいと思います。

色々見分け方ありますが、3つほどご紹介します。早速いってみましょう!

 

その1:「表情」が違う!

まず、顔を見比べてみましょう。

上がブリ、下がヒラマサです。

"

同じじゃないか!!!!という声が聞こえてきますが、私が先輩に一番初めに違いはなにか聞いたときに、

「ブリのほうが優しそうで、ヒラマサのほうが厳しい顔してんだよな〜」

と言って立ち去られたことがあったのでこちらを一番最初にご紹介しました(笑)

 

確かにこころなしか下のヒラマサに比べると上のブリのほうがぽてぽてしてまろやかな顔をしていませんか?

わからなくても安心してください、まだまだ違いはあります!

 

 

その2:「体型」が違う!

次に先程の写真を使って体全体を見てみます。

上がブリ、下がヒラマサです。

ブリの方がボテッと太っており、ヒラマサはシュッとしている印象を受けませんか?

また、この写真だと伝わらないのですが、ブリは身が厚く、ヒラマサは身が平たいです。

ここまでをまとめると、ボテッとして太っているかわいい方がブリで、平たくてシュッとしているイケメンがヒラマサということになります。

 

まだわかりずらい方のために最後にとっておきの見分け方をご紹介しましょう・・・!

 

 

 

 

その3:「胸びれ」が違う!

今回は胸びれに注目してみてください。上がブリ、下がヒラマサです。

上のブリが黄色い線にヒレがかかってないのに対し、下のヒラマサは黄色い線にヒレがかかっていますよね?これが一番見分けやすいかと思います。

これで表情や体など主観的なものに頼らず見分けることが可能です。

最初からこれを言えよ、という声が聞こえますが、実際の魚関係者は本当に雰囲気とかで一瞬で見分けているので最初の1、2の違いを知っておくことは無駄では決してありません。

 

 

最後にテストをして終わりましょう。どっちがブリでどっちがヒラマサでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

上がヒラマサ、下がブリでした!

これであなたもお魚マスターへの第一歩を踏み出しました、これから一緒にもっと詳しくなっていきましょう!

 

人生100年時代へ魚やさんの提案~ヒラメを捌きませんか?~

※血など多少グロテスクな写真が含まれています。

 

 

みなさん、最近世の中では人生100年時代といって話題ですが、100年も生きていれば、ヒラメをさばかなければならない事態に出くわすこともあるかもしれません。

また暇で暇で退屈になって「そうだ、ヒラメさばこう」という気持ちになる可能性は0とは言えないのではないのでしょうか。

そんなときのために今回はヒラメのさばき方をご紹介していきたいと思います。

カンタンに流れを説明すると、ウロコをとる→頭を落とす→内臓を出す→骨から身を切り離す、という流れですが節々のポイントと合わせてステップごとに解説していきます。

今回は初心者でもできるさばき方ということで「5枚おろし」に挑戦していきます。

 

【必要な物】

・必要な枚数のヒラメ

・よく切れる包丁

あったほうが良いもの

・ウロコとり(包丁で代用できます)

・歯ブラシ(血合いを取るのに便利です、包丁で代用できます)

 

また環境としては流水の近くが望ましいです。でないと内臓やまな板を洗うときに大変です。

では実際にさばいていきます。

 

①うろこを取る

まず自分の左側に魚の頭が来るように魚をまな板の上にセットします。

そしてウロコをとります。ウロコ取りがあればそれを使用しますが、包丁で代用可能です。

魚の身を撫でるようにして鱗をとっていきます。結構強めに押し込むようにしないとなかなか取れません。

ヒラメの表面にはぬめりの層がありその下にざらざらしたウロコがあります。完全に取りきることは難しいので、これから包丁を入れていく、背びれ尾びれの縁の部分だけは念入りにやっておきます。

 

②頭を落とす

↑↑頭を落としていきますが、垂直でなく少し左斜めにして包丁を入れます。今回は大きいので片面ずつ切っていきます。

骨が非常に固いので包丁の刃元の部分を使って両手で切ります。

表面を切ったら逆側に包丁をいれ完全に切り落とします。

 

切り落とした頭部を引っ張ると内臓も一緒に出てくるので繋がっているものは一緒に取ってしまいましょう。

 

③卵をとる

切り落とした頭部の切り口から腹の部分を少し切り、卵を取り除きます。

④血合いを取る

内蔵や卵が入っていた空間の背骨側に赤黒い血の塊を見ることができると思います。

この部分が血合いですのでブラシがある方はブラシでこすって取り除きます。

ない方は包丁で切れ目を入れて包丁や手でかきだします。

この段階でまな板がだいぶ汚れていると思います。

しっかり洗って怪我をしないようにしましょう。

 

⑤片面ふっくらしたサイドから背骨に向かって包丁を入れる。

ものによってどちらがふっくらしているかは変わりますが、身の厚い方から背骨に沿って一直線に切れ目を入れていきます。

 

 

ここからだんだん捌いてる感を感じられるようになります。

 

⑥ 身を切り離す

次はヒレに沿って切れ目を入れておきます。

切れ目を入れたら背骨から身を切り離していくときにこの切れ目を目指して切っていきます。

 

背骨に擦り付けるようにして包丁を使って縦方向(頭・尾びれ方向)にスゥーっと少しずつ切っていきます。

家庭用消費なら問題ありませんが、あまりノコギリのような使い方をすると断面がボロボロになりこちらは売り物にならなくなってしまいます。

逆側も同じように切れ目を入れて背骨から包丁を入れていきます。

⑦逆サイド

逆サイドも同じように切っていきます。

切れ目を入れる順番が逆になっていますが気にしないでください。

⑧出来上がり

以上の工程で終了です。

あらは基本捨てますが、干して食べることは一応できます。

 

↑お疲れさまでした。こちらがヒラメの5枚おろし完成図です。

 

最後にコツを言っておきますと、焦らないこと。骨を感じながらやること。です。

焦ると身がボロボロになりますし、骨の位置を見誤ると可食部が減ったり、おかしな方向に切れたりしていまいます。

焦らずにヒラメとお話しながらゆっくり試して見てください🐟

それではまた次回!

 

 

 

 

 

 

ほたて耳吊り

今年もほたての耳吊りが始まりました。

 

【ほたて耳吊りとは?】

毎年10月下旬から11月上旬にかけて北海道から仕入れたホタテの子供(半成貝(はんせいがい))が続々とホタテ養殖業者の元へ運ばれてきます。

その一つ一つの、ホタテの「耳」と呼ばれる部分に穴をあけ、ロープに編み込んだピンへ差し込み、ロープを筏に吊るして海へ入れます。

この作業を「耳吊り」といい、生産者にとって一年で一番大変で忙しい時期になります。

↓とても地道で根気のいる作業が長時間続きます。

時間との勝負、とでも言うように運ばれてきてからすぐに開始し、文字通り寝る間も惜しんで作業をすすめます。生産者によっては1週間前後、一日20時間を超えて働き続ける人もいるようです。

こうして海へ吊るされたホタテは約半年後、初夏の時期に水揚げされます。

ホタテの入った重たいカゴを運んだりすることがとても大変な一日でした。

お客様へ届けるお魚屋さんとして生産者がどういう思いで何をしているのか、一つ一つのものがどうできているのか、そういうことを知り、また伝えていくことが重要なのではないか、そしてそれを知るからこそ日々口にする魚や貝がよりおいしく感じられるのではないかと感じています。

 

それでは次回!